いばら姫
「こら、くっつくなよ」

「何よー、こんな時くらい昔みたいに手繋いで仲良くしたっていいじゃない」


右腕に絡み付いたまま胸を押し付けてくる梨華。

最近彼女の考えている事がよくわからない。


ったく…人の気も知らねーで。


小悪魔の気まぐれに翻弄される自分に不甲斐なさを感じつつ、それでも理性を保とうと必死に葛藤する京平はうっかりしていた。


「あれ…何か忘れてるよーな…?」

「え?何か言った?」

「いや、何でもない」



腕を引かれるまま人込みの中に消えて行った京平と梨華の後ろ姿を見送ったハルは

「どーせ俺なんて存在感すら薄いですよ…。なんだよなんだよ…。一緒につれてってくれてもいーじゃんかよ…」

廊下にしゃがみこみ、何やら孤独に指でいじいじと地面をほじくっていたのだった。

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