いばら姫
「もう少しだけここにいてくれないかなぁ?あたしこれから京平君のライブ見に行きたいからぁー」
「えっ…」
さすがにこの時ばかりは露骨に嫌な顔をした。
…私だって見に行きたいのに…
渋っていたとは言え、折角京平自らとっておいてくれたチケットだ。
何が何でも見に行きたい。
「あの…でも…」
茨は勇気を振り絞って反論しようとした。
が、しかし。
その弱々しい抵抗は彼女達の強気なオーラに呆気なく掻き消されてしまう。
「ってゆーかさぁ、アンタいっつも恭平君に付きまとって迷惑かけてんだから
今日くらい大人しくしてなよ!」
「え……」
“迷惑”という言葉に茨は思わず反応した。
いつもなら気にしないような言葉が
今日はいつになく重たくのしかかり、胸に刺さる。
「まさか本気で恭平君に相手にされてると思ってるわけじゃないよねぇ?」
「あははっ!だとしたら超いたぁーーい!!あ、もともとイタい子だっけぇ!」
「っていうかぁー、恭平君には梨華サンって言うちょーーーお似合いな彼女がいるんだからあんたなんかが割って入れる隙間これっぽちもないんだよ!二人は中学の頃から学校公認のカップルだったんだから」
ここまで言われたらもう、反撃する気になんてならなかった。
どうせ何を言っても言い負かされてしまうに決まっている。
「じゃあそういう訳で、宜しくぅーーー♪」
ただ無言でいたのを承諾したと受け取ったのか、三人は気分上々で茨を一人残し、早々と体育館へ向かっていってしまったのだった。