いばら姫
地元アマチュアバンドの中じゃかなり知名度はある方で、実際ライブの依頼を受けたり取材を申し込まれたり、雑誌に紹介されたりする事も少なくなく、
ボーカルである京平は特に存在感のある独特の雰囲気と、人々を魅了してやまないその甘い声を武器にして、今もなお女性中心のファンを増やし続けていた。
ちなみに、学校卒業と同時にメジャーデビューの声も上がっている彼らが文化祭でライブをやると体育館がパニックになるので、当日は整理番号を配って午前の部と午後の部に分けて開演する事になっている。
「去年はキョン様の熱~い視線に見事に射抜かれてしまいましたからね~。勘違いしちゃって私たちの仲を裂こうとする熱狂ファンが現れたらどうしましょう…」
「誰もお前なんか見てねーっつっただろ!」
「あっ可愛い子がいたからって浮気しちゃダメですよっ!?」
「聞けよ人の話!そもそも付き合ってもねーから!!おめでたい妄想も大概にしろよ!」
茨はつーんとしながら聞こえないフリをして山積みに置いてあるアンケートに手を伸ばした。
「さっ早くまとめちゃいましょ」
なっ…なんか俺がもたもたして進んでなかったみたいになってねーか!?
納得いかないながらも早々にこの場所から立ち去りたい気持ちでいっぱいだった京平はあえて突っ込まずに大人しくアンケートに目を通しはじめたのだった。