いばら姫
「お前…何か今日変だぞ?(いつもも色んな意味で変だけど)」

「茨姫は12時の魔法が解けて泡になって消えてしまうのです」

「いや意味わかんねーし!しかも話混ざってるから、それ!」

「…もうつきまとったりしませんから…安心してくださいね」

「………は?」


「彼女と…お幸せに」


消えそうなほど小さい声でそう呟くと、茨は逃げるようにしてその場を立ち去った。



「あっ、ちょ、おい!!」


自分の意思かどうかもわからぬまま、京平の身体が勝手に茨を追いかける。


「待てよ!俺が何かしたか!?お前の言ってる事よくわかんねぇよ!!」

「ならほっといて下さい!!」


“走るな危ない”の貼紙がしてある廊下を全力疾走で走る茨と京平。

人気は少ないと言ってもゼロじゃない。


すれ違う人達が例外無く何事かというような顔で振り返り、いらん注目を集めていた事に、本人たちは気づきもしなかった。



パシッ。


「待てってば!」

「!」


足には自信があった茨だがやはり男の足には敵わない。

腕を捕まれてやむなく一旦足を止めると、振り返らずに耳だけを後ろに傾ける。

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