いばら姫
「だからくっつくなってば!」

「照れなくてもいいじゃん、幼なじみなんだから」

「そうゆう問題じゃねーよ!大体、お前最近やたら俺の前に顔出すけど何か企んでんじゃねーだろーな?」

疑いの眼差しを梨華に向ける京平。


「あははっ、企んでるって何をよー!」


本人はそう言って笑っているが、彼女の腹の黒さには中学の頃から薄々気づいていた。

身内という色眼鏡を外しても梨華は外見も可愛いし、男だって放っておかない。


今こうして自分に付き纏っているのも、どうせ京平が将来有名になりそうだから今のうちに取り入っておこうというのが本音だろう。


「あたしはただ京平が淋しがってんじゃないかな~って思って様子見に来てあげただけ~」

「はぁ?何で俺が淋しがんのよ」

「ハルに聞いたよ~?姫と喧嘩したんだってー?」


…情報早ぇーな。
全く、暇人どもめ。
 


「あたしねぇ…本当はちょっと悔しかったんだー。昔は本当にあたししか見えてないって感じだったじゃない?京平って」

「そ…そーだっけ?忘れたな、昔の事なんか」


改めてハッキリそう言われると認めたくないのが男の性というもの。

しかし本当は今でもあの頃の事を鮮明に覚えている。


ましてやそれが初恋だったから尚更だ。

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