いばら姫
「だから、安心しちゃってたんだよね。あたし以外の女の子を京平が好きになるはずないってさ」

「…すっげー自信」

「あははっ。だからこそね、あたし凄く後悔したんだよ。あの日…卒業式の日の事をね…」


卒業式…か。


それは京平が告白をすると決めた日だった。

中学までずっと同じ学校だったのに、高校が別々という事に激しく不安、というか不満を感じていた京平。

しかしまさか梨華を追い掛けて女子校に入学するわけにも行かず、同じ高校に行くのは諦めた。

でも、一つの区切りとしてただの幼なじみという関係から少しでも変われたらと想い、京平は告白する事を決意したのだ。


メールで、話があるからと近所の公園に梨華を呼び出したのはよかったけれど

結局、何時間待っても梨華はそこに姿を現さなかった。


子供心にフラれたんだ、と痛感した瞬間のあの痛みを…忘れられるわけがない。


「離れていくのがわかった時…初めて気づいた。あぁ、あたし京平の事が好きだったんだなぁーって」

「……………」

「恋はさー、タイミングが大事なんだよね。あたしは…最高のタイミングを逃しちゃったんだ」


珍しく真剣な顔で梨華は続ける。


「だから、京平も意地張ってタイミング逃しちゃダメだよ?」


姫と京平ってなんだか似てるから心配で!と爽やかに梨華に言われ

「俺あんな痛くねーよ!」

と反論するが、梨華の話には妙に説得力があって勇気づけられた。

もう一度向き合ってみようという気持ちにしてくれた。


やっぱり

恋愛云々とかじゃなく、
一人の人間として

梨華は最高のパートナーだ。



プライドの高いお前に
あそこまで言わせて

本当に…ごめん。


ありがとう。

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