いばら姫
「はは、夢なんかじゃねーから安心しろよ」
「だだ…だって、彼女は!?」
「は?俺彼女なんていねーけど」
予想外の言葉にまさしく目が点になっている茨。
「えっ!だって文化祭の時見たもん!すっごい美人と歩いてたもん!!」
「あぁ…!もしかしてそれで諦めるとか言ってたの?あれ幼なじみだよ」
「へっ…?だって…だって……私の前ではキョン様あんな風に笑ってくれないし……」
「…んなことねーよ。てかその変な呼び方やめてくんない?ちゃんと名前でよんでよ」
折角想いが通じ合ったのにこれ以上不機嫌になられたくなくて、茨は慌てて呼び名を訂正した。
「きょ…京平…?」
「………っ!」
自分とした事がすっかり忘れていた。
茨が、黙っていれば息を飲むほどの美女だと言うことを…。
猫のような大きな瞳できょとんと見上げるように名前を呼ばれてしまっては、ごまかしようがないくらい胸は高鳴る。
「あぁ~もう!なんでそんなに可愛いかなお前は!!」
京平は後ろからぎゅっと茨を抱きしめた。
腕の中で笑う茨もまた、幸せそうだ。
「好きです…大好きです」
「知ってるって」
俺だってきっと
気づいてなかっただけで
本当はとっくに
君に恋してた。
薔薇のように美しく
情熱的な
その瞳に。
~Fin~