いばら姫
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「ん~やっぱ飲食関係が多いな。あとはコスプレ系か…」

 何が楽しいんだかなぁ
 コスプレなんて。


「こっちはシンデレラ城ですね!みなさんきっての希望でシンデレラ役は私、王子様役はキョン様ですよ!」

「嘘つけぇい!!おもっクソお前だけの希望だろが!大体なんだよシンデレラ城って。クラスの出し物っつってんだろ?下手したら二人で足りるじゃねーか」


的確な京平の指摘に茨はしまった!というような顔をしてうーんと唸りはじめた。


「きっ…近所のお魚やさんと…裏に住んでる苦学生…あっ!同居してるおじいさんとおばあさんの役もありますよ!!」

「……夢の国からいきなり現実的になったな」


他にも三丁目の豆腐やさんだの

コンビニにいつもたまっている中学生だの

生協のお兄さんだの

お前んちの近所の状況だろ!とツッコミを入れたくなるものばかりあげてくる茨。

だけど決してふざけているわけではなく、むしろ一生懸命登場人物を指折り数えてる姿がなんだか可笑しくて、京平はついつい吹き出してしまった。


「な…なんですかぁ…」

「あははっ。だってお前それ本気で言ってんの?まぁ、ある意味斬新でおもしれぇかもしんねーけど。ははっ」

「わっ、笑いすぎです!」


からかわれたような気分になったのだろう。茨は真面目に言ってるのに!と顔を真っ赤にしながら頬を膨らませた。


こんな風にいつも主導権を握れたならきっと京平もまんざらじゃないのかもしれない。

現に今、こうして笑い合っている自分は、自然体そのものだった。

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