いばら姫

ないないない!!


一瞬だけ未来の自分達を思い描いてみるものの、あまりの違和感に京平は思い切り首を横に振った。


危ない危ない…!

勢いに飲まれて洗脳される所だった!


どうやら彼は押しに弱いタイプらしい。



「ほら、下らない事言ってねーで帰るぞ」


めんどくさそうに立ち上がり、伸びをしながら教室を先に出る京平。


本当はいまいちトロくさい茨を置いてすぐにでも帰りたい所だったが

いくら苦手な相手といえど、女一人で夜道を歩かせる訳にもいかず、先に帰るような薄情な真似が出来ないあたり、彼は相当なお人よしなんだろう。


寒くもなく

暑くもなく。


心地のいい五月の季節。



時折温度のない風が優しく頬を撫でると

それはどこか無機質なようで

なんだか寂しく感じた。



「ご…ごめんなさい…。なんか送ってもらっちゃって…」


いつもの図々しい態度とは打って変わって、優しくされるのに慣れていないのか、茨は申し訳なさそうに道のはじっこをこじんまりと歩いていた。

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