いばら姫
「お、おはよーございますキョン様!」
気を取り直していつものテンションで京平のもとへ駆け寄る茨。
「今日は早ぇーのな」
悪戯に笑う少年っぽい笑顔がキュンと胸を締め付ける。
「は、はい!あの、えーっと…
凄く素敵な夢を見たので、目覚めが良かったのです!」
挙動不審になりながら咄嗟に走らせた一言。
寝ていないのだから夢もクソもないのだが別に嘘をつこうと思ったわけではない。
ただ、いつもより高鳴る鼓動のせいで、頭が正常に働いていないだけなのだ。
もっとも普段から正常なのかどうかも怪しいのだが。
「へ~どんな夢だよ?」
「あ、はい!えっと…えっと…キョン様と私が熱い契りを交わしている夢で目覚めたんです!」
京平は合間合間に飲んでいたコーヒー牛乳をブーッと思い切り吹き出した。
「げほっ、げほっ…ごほっ…!」
気管につまり苦しそうに噎せる京平の背中をさすろうと茨が手を伸ばす。
「だっ…大丈夫ですか!?意外と照れ屋さんなんですね、キョン様は!」
「照れてねぇよ!!ドン引きしたんだっ!!」
「またぁ~。隠さなくていいですよ、ほら!今は教室に二人しかいないんですからっ」
一旦背中をさする手を止めて顔の横で組み、万遍の笑顔を見せながら身体をくねらせる茨を見た瞬間、寒気と殺意が京平の身体を駆け抜けた。