恋しぶき〜先生と泳いだ季節〜
「…先輩。なんで私が殴られないといけないんですか?」
愛はまだ痛むらしい左ほほをさすりながら、野澤先輩にきつい視線を送り続けている。
「江藤、自分で何してるか分かってないの?一色くんの練習、邪魔してるの、気付いてないとは言わせないわよ。」
野澤先輩も、きつい表情を変えることなく腕組みをしながら愛に言い放った。
一色くん…、
一色先輩のこと???
「確かに一色先輩から泳ぎを教わってますけど…、それが野澤先輩とどう関係あるんですか?」
…てか、愛も先輩相手に強いんだけどーー!!
「江藤が気付いてないから忠告してるの!一色くん、江藤に泳ぎを教えるようになってから、タイム伸び悩んでるのよ。これじゃあ目標のインターハイもギリギリだと思う。」
不意に野澤先輩の表情が心配の色をにじませた。
「『じゃあ、江藤に教えるの止めたらいいのに』って、私は一色くんに進言したんだけど、『江藤がちゃんと泳げるように見届けたい』って。」