恋しぶき〜先生と泳いだ季節〜
渋々プールに入って、渡先生からもらった黒いゴーグルをつける。
そして秒針をにらむ。
3、2、1…。
5秒経ったと思ったところで、私はプールの壁を蹴った。
ああ…。
まだあと5回残ってる。
もう息がかなり荒い。
こんなことで、泳ぎを叩き込むなんて…、無理だよ…。
「…お。リオ!」
誰か、私を呼んでる…?
5本目の25mを終えて、私は自分の背丈ギリギリの水深に溺れそうになりながらプールサイドにしがみついた。
「莉央!」
やっぱり、私の名前。
でも、まだ愛は週番で練習に来てないハズだし、そもそも、この声、男の人…!?