恋しぶき〜先生と泳いだ季節〜
「え?富士山って、夏でも寒いの?」
梅雨明けした雲の合間から、太陽がプールの大きな四角い窓を照らす。
夏休み前のある日の部活の時間。
私は体操しながら少し驚いた声を上げた。
「うん。頂上は8月でも気温はひとケタなんだって。」
私と同じ動きをしながら、川崎さんが教えてくれた。
「へぇ~。厚着して登った方がいいのかな?」
「リュックに防寒着入れて行けば?たぶん登り始めは暑いよ。」
「なるほど…」
そんな私達の会話を聞いた渡先生は、
「莉央、俺が作ったしおり読んだのか?登山に対する考えが甘いぞ?」
…と、苦笑いしながら言った。