色恋花火
前につんのめりそうになりながらあたしは彼の後をなるべく早足についていく。


グルメ…って言っても定番のタコ焼きかヤキソバか駄菓子くらいしかないじゃん…。



と、残念な事に気づいたがそんな野暮を言うのはよそう。

連れ回してくれて、気分が紛れているのは確かだし。
すれ違う人達が頬を染めながら修二を振り返るのには優越感を感じた。



…拓馬が修二みたいだったらいいのに。



面白くて

優しくて。


今日初めて会ったのに

拓馬よりずっと
あたしに気を使ってくれているのがわかる。


べつに関西弁でしゃべって欲しいとか

ボケて欲しいとか

そんな事を求めてるわけじゃない。


ただ…

もう少し

あたしの気持ちを解ってほしかったんだ。

一年以上も一緒にいたんだからさ…





「おいしーい!」


林檎飴なんて買ったのいつぶりだろう?

子供ながらにあの艶めかしい鮮やかな赤に魅せられていたあの時代を思い出す。

「まぢで!ちょっとちょーだいや!」

「いいよ、交換ね!」


林檎飴を修二に手渡し、代わりに彼のチョコバナナを受け取った。


「コレも最高っ!」


ただバナナにチョコをかけただけの単純なものが、お祭りというだけでその味は何倍も美味しさを増す。

この仕組みは成長した今でもわからないままだ。

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