色恋花火
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「こんなとこよく見つけたね!」


あたしは連れてこられた場所に素直に感動していた。

少し高い丘になっているそこからは、花火だけでなく、海と街の景色までもが一望出来る絶景の場所で。


地元人であるあたしですらこんな所知らなかった。



「親戚のオッチャンに聞いたんや。女口説くには最高の場所や~ゆうて」

「えっ…」


事もなげに笑いながら爆弾発言をする修二。

それじゃあまるでこれからあたしを口説く為にここに連れてきたみたいだ。



意識しすぎて高鳴る鼓動に気付かれまいとすればする程、顔に熱が集まり落ち着かない。


そんなあたしの態度とは反対に修二は至ってリラックスしていて、しまいにはその場で寝転がり出す始末。



何だろう…この温度差。

もしかして

冗談?



期待してたわけじゃないけれど、何だか変に身構えていた自分が馬鹿らしく思えてあたしは自嘲するように息を吐いた。



「明日には帰らなあかんのかー…。もっと香里奈と遊びたかったなぁ」


しばらくボーッと星空を眺めていた修二が思い出したようにそう呟く。


「帰るって…何処に?」


「大阪」


そっか…

お手伝いで来てるって言ってたもんね…

明日、帰っちゃうんだ…。


どちらかと言えば自分は感情が顔に出やすいタイプだと薄々感づいていたけど


「なに、寂し~?」


修二が確信めいた意地悪な笑みを浮かべるほどわかりやすいのだろうか?



寂しいっていうのは少し違う気がするけど


でも、確実に別れを惜しんでいる自分がそこにはいて…


この感情がなんなのか
自分でもよくわからないままあたしは


「…ちょっとだけ」


と答えていた。

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