色恋花火
「なんや自分素直になってきたやん~!」


満足そうに笑う修二がまたあたしの髪の毛をぐしゃぐしゃと掻き回す。


「崩れるってば~!」


言いながら、一応は手をどける仕種を見せて抵抗するけど

本当はそんなに嫌じゃなかった。


子供の頃、親に褒められて頭を撫でられた時のそれと同じような気持ちになった。

照れ臭くて

くすぐったいような

あの感じ。


「まっ、香里奈が寂しいゆーなら俺、毎年香里奈の為に会いにくんで!」

「…ほんと?」


修二はよく冗談を言うから、彼の言葉が本気かどうかを瞬時に見分けるのは至難の業で。


だからあたしは、身を乗り出して



“本当に今日でバイバイじゃない…?

また会える…?”


と、その一言にこれだけの意味を込めて修二に訴えかけた。


それが伝わったのかどうかをあたしが知る術は無かったけど


「おぅ!約束な!平成の織り姫と彦星の誕生や!」


と言って彼が小指を絡ませてくれた事で、きっとそれは現実になる。


そう確信したあたしは胸を撫で下ろしながら俯くと、修二に気付かれないよう軽く微笑んだ。




声をかけてくれたのが君でよかった。


お祭りを一緒に回れたのが君でよかった。


花火…見るのも。

きっと君で良かったんだと思う。




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