色恋花火
「ねぇ…どうしてあたしだったの?」
あたしは再び修二の方に目を向け、素朴な疑問をぶつけた。
だって
泣いてる所も見られてたはずだから…。
もしもあたしが第三者なら、きっと関わりたくないって思ったと思う。
ううん、あの場にいた人達は現にそう思ってたはずだ。
「ん~……この歳んなって恥ずかしいけど、一目惚れや」
まさかそんな答えが返ってくるなんて微塵も思っていなかったあたしは目をむいた。
「可愛い子がおるな~思て見てたら…めっちゃ悲しそうに俯いて泣きそうな顔しとるから…なんとか笑かしたろー思ったんや」
照れ臭さそうに人差し指で頬をかきながら目を泳がせている修二。
その真実にあたしは更に驚く。
「いっ…いつから見てたの~っ!?」
「んっ?最初から♪」
さ…最初っていつ!?
電話してた時から!?
それとも来た瞬間から!?
もしかして二時間も待ちぼうけしてるマヌケな所見られてたの!?
穴があるなら入りたいと思った。
百歩譲って、待っている間の独り言を聞かれていないにしても。
いや、電話越しにわめく醜態を見られていなかったとしても、だ。
彼の目には、完全に気合い入れて勝負をかけていたにも関わらずデートをすっぽかされた惨めな女に見えたに違いない。
か、格好悪るすぎる…
そりゃ同情もしたくなるだろう。
けれど、修二は
茶化すでもなく、笑うでもなく、真剣な顔で続けた。