色恋花火
「ったくこのアホ女が。ぼけっとしてっから変なのに捕まんだ!」

「ひ…ひどい…」


そりゃ、まだハッキリ別れたわけじゃないのに

他の男とデートして
思いっきり楽しんじゃった事は、多少なりとも悪いと思ってるし。


それに対して、拓馬がいつも以上に攻撃的になっていると言うのなら、あたしに咎める資格はないのかもしれない。

けど…




それにしたって

もっと言い方ってもんがあるんじゃないの?



ムカついて

悔しくて


それでも強気に出れない自分の弱さに視界が歪んだ。


「酷いやっちゃなー。女の子になんちゅー事言うんや、可愛そうに」



それまで黙って聞いていた修二が、半身を起こして血混じりの唾をペッと吐き出しあたしを擁護すると、座った状態のまま拓馬を見上げた。



「あぁ?俺の女に何を言おうとてめぇに関係ねぇだろーがよ!」


水と油ほどに性質が違う二人は、互いの行動や言動一つにおいてもいちいちカンに障るようで

修二の紳士的な振る舞いがチャラついてるように見えて気に入らないらしかった拓馬は、苛立ち任せにもう一発殴ってやろうと胸倉を掴みにかかった。


「やっ…やめてよ!修二は落ち込んでるあたしを元気付けようとしてくれただけなんだからっ!」


顔を青くしながら、これ以上修二の綺麗な顔を傷つけさせないよう、あたしは拓馬の腕にしがみつく。


「はぁ!?元気づける!?あわよくば一発ヤれるの間違いだろ」

「なっ…何て事言うの!?信じらんない!!」


どうしてすぐそういう方向に思考が行ってしまうのか不思議で仕方ない。

何より本人のいる前で平気でそんな事を言えてしまうその神経を疑う。

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