色恋花火
「お前が男を知らなすぎんだよ!上っ面の良さしか見てねぇで…恰好のカモだっつの、お前みたいなバカ女!」

「なっ…によ…!バカって言った方がバカなんだからっ!!」

「はぁ?幼稚園児かてめーは!」


(どっちもどっちだよ…)
宥める隙がないくらい、子供じみた小競り合いを繰り広げているあたしたちをアウェイな感じで呆れたように見ていた修二はいよいよ見兼ねて


「はいはいストーップ!」


ついに無理矢理間に入った。




「俺はただ香里奈が泣いとったから一緒に遊ばへんか誘っただけやで。第一、彼女にそんな顔させとったアンタにも責任あるんちゃうんか」

「…………」


正論を諭され悔しそうに押し黙る拓馬。

少なからず悪いとは思っているようだ。


「この際もぉハッキリしよーや。別れるのか別れないのか。アンタがいらんゆーなら俺がもらう」


いつの間にか花火はとっくに終わっていたようで、ザザッと吹いた突風の音が妙に大きく響いた気がした。

もらうって…物じゃないんだけど…。


板挟み状態のいたたまれない気持ちをどうにかしたくて頭の中で突っ込んでみたものの、やはり気まずいものは気まずかった。

けれど困惑の中にも嬉しい気持ちが無かったと言えば嘘になる。



「俺とおった方が香里奈も絶対幸せやと思うわ。平成の織り姫と彦星んなろー約束したところやったしな!」

年上の余裕とは凄い…と思った。

負けず嫌いの拓馬に反撃の余地を与えず、自分のペースに巻き込んでしまうなんて高度な技術、普通じゃなかなか出来ない。


最初の勢いある登場から一変して、完全に主導権を手にした修二は、ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべてあたしの肩に手を回し、これでもかと拓馬を挑発しにかかった。

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