色恋花火

「調子乗ってんじゃねぇぞテメェ…」

「おーコワっ。そうやって凄めば諦める思ってんの?回りくどい事せんと好きなら好きってゆーたらえぇやんか」


あたしは修二の腕を振り払う事が出来ずに大人しく肩を抱かれた状態で拓馬を一瞥する。

心なしか、顔がほんのり色づいているように見えた。


…まさかとは思うけど…

もしかして、照れてる…のかな…?




「おっ…俺はテメェみてぇにチャラついてねーから!」

そんなものはやたらめったらに言う事じゃないと付け加えた拓馬の主張に納得のいかない様子の修二。

「お前なぁ…そんなん言うけど俺がチャラついてるとこ見たんか?見た目で人を判断するなんてちっさい男やなぁ」

「うっせぇ!てか、いつまでくっついてんだよ!離れろ!」


これ以上言い合っても歩が悪くなるだけだと判断したのか、拓馬はお得意の“都合が悪くなったら論点をずらす”攻撃を実行し、あたしと修二の接触を無理くり解いた。



「…ったぁ…」


その容赦ない衝動であたしは地面に叩き付けられる。

……ん?


ふと自分の足元に目をやると


何コレ?


小さいメモのような紙がひらりと落ちている事に気づき、あたしはまだいがみ合っている二人の横でそれを拾い上げた。



「club AQUA SWAORD梅田店…代表取締役補佐…SHUJI…?」


その紙に記された文字を声に出して読み上げてみると、はっとして驚いた修二がこちらを向いた。


夜の世界には詳しくないけど

スーツ姿でそこに映る修二はどう見てもその世界の人だった。


あたしの視線が戸惑いながら、何度も名刺らしいものと修二の顔とを行ったり来たりしていると


「あぁ~バレてもたかぁ」

またあの悪戯好きっぽい笑顔を見せて彼はそう言った。

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