色恋花火
確かに、付き合ったキッカケは苗字が同じで席も隣同士。

女にしては高い175センチという身長も同じで

あらゆる面で彼とは重なる部分が多かった。


遠足で同じような私服を着ていたり

偶然持ち物が色違いだったり。


そんなちょっとした事の積み重ねが、名物カップルと呼ばれるまでに至った経緯なのだが

少なくともあたしは
拓馬が好きだったから付き合おうと思った。


自分にはない魅力を彼は沢山持っていたから。



でも…

拓馬は違うんだ…。






「そっか…じゃあ、もうバイバイだね…」



お願い…

引き止めて。


“うそだよ、俺が悪かった”

って、そう言ってよ。




『……そうだな』




あんなに欝陶しかった雑踏が急に聞こえなくなった。


何も考えられなくなって

頭が真っ白になって。


でも自分から言い出した手前、引き返すことも出来なくて。


プーップーッという機械音だけが意識の片隅でぼやけたように響いていた。





「……拓馬のばか」


一年半という道のりは気が遠くなるほど長く感じたのに

終わる時はほんの一瞬で、それこそその瞬間から赤の他人に成り下がる。


そう考えると、今までの時間って一体なんだったんだろう?

散々振り回されて
散々悩まされて。


思い返せば
あたしばっかり

苦しんでたような気がする…。




彼との通信が途切れた携帯をギュッと握りしめて

あたしはその場にしゃがみ込んだ。

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