色恋花火
「食べる?」

「えっ?」


急にタコ焼きを差し出されてあたしはどうしていいかわからず戸惑う。


「そんな物欲しそうな顔で見つめられたらやらんわけにいかんやろ~。これ食べやー、オゴるし!」


いや…

べつにタコ焼きを見てたわけじゃ…。



この人の中であたしの第一印象はきっと食いしん坊女に決定したに違いない。


否定するべきかどうか悩んでみたものの、お腹が空いてるのは事実だし、第一折角の好意を無駄にするのも勿体ない。


「あ…ありがとうございます」


あたしは申し訳なさそうにタコ焼きを受け取った。



「そのかわり…」

「えっ」


まさか条件付きだなんて予想もしない展開に身を強張らせるあたし。

どんな無理難題をふっかけられるのかとビクビクしていると


「そんな怖がらんといて~。ただちょっとおサボりに付き合うて欲しいだけやねん」


お兄さんは片手でゴメンのポーズをとりながらそう言った。



「おさぼり?」


あたしはキョトンとしながら言葉を返す。


「あっちの屋台で親戚のオッサンとタコ焼き売ってんねんけど飽きてもーた。やけど一人で祭回るんも寂しいし。一緒におってくれたら嬉しいなぁって!」

「はぁ…」


関西訛りのせいか幾分早口に聞こえるお兄さんの言葉に、半分も理解してないうちから歯切れの悪い曖昧な返事を返すと


「えっ!ほんま!?」


彼はそれをOKという意味に取ったのか


「すんませんなぁ。ほないこか~!」


と上機嫌であたしの手を取り歩き出した。

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