色恋花火
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「所でおねーさん名前なんていうん?」

「…香里奈…ですけど」


一瞬本名を言ってしまって大丈夫だろうかと心配になったが、かと言って偽名を使おうにもしっくりとくる名前が浮かんでこず、あたしは仕方なく、本名を教えた。


「むっちゃ可愛い名前やん!俺は修二。よろしくな~!」

「…よろしく」


修二という人はとにかく相手を褒めまくるのが癖みたいで、口を開けば何かと可愛いという言葉を口にする。

そこまで褒めちぎられるとわざとらしく聞こえがちだが、さほど嫌味を感じないのは彼のその人なつこい悪戯な笑顔のせいだと思った。




「なぁなぁ、あれやろーや!スーパーボールすくい!」

「えっ」


修二の人差し指の先に家庭用プールとスーパーボール掬いの看板が見える。


色んな最悪の事態を想定して対策を練りながら歩いていたあたしはそれを見た途端に拍子抜けしてしまった。


警戒を解くための演技かもしれないという線も考えたけど

そこらの子供達に劣らない程のはしゃぎ様を見せる修二を見ていると

どうやら彼は本当にただ遊んで回りたいだけのようだった。




「昔な~お祭りに行くと絶対っちゅーくらいおとんにスーパーボール掬いに連れてかれてん。んで、俺、なんでかめっちゃくちゃ上手かったんやんか。どんだけ取んねん!ってくらい掬っててな~。一時期コレクションが凄かったんやで~!」

突然修二が話しはじめた聞いてもいない思い出話に

あたしは

どんな幼少時代だよ!

と思わず心の中でツッコミを入れながらクスリと笑う。

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