Far near―忍愛―


どこをどう間違えればこんな辺鄙な所まで来てしまうのか

気がつけば、見たこともない殺風景な川辺に俺は立っていた。


家に帰りたくない思いが、自然とここへ足を運んだのかもしれない。


ほとんどといっていいほど真っ暗で何も見えなかったけど、土手らしい地面に腰を降ろして、なんとなく寝転がれば、視界には暗闇にちりばめられた宝石達が飛び込んでくる。


一つ一つはとても小さくて

放つ光りも弱々しいのに


何万個、何億個も集まるとこんなにも見事な輝きになるのだから星ってやつは不思議なものだ。


「あっ、流れ星!」


一瞬得した気分になってテンションが上がる。

よく、流れ星が流れ終わる前に願い事を三回唱えると願いが叶うなんて話を小さい頃に聞かされたけど


「…絶対無理じゃん…」


願掛けをしようとしたそばから一瞬にして姿を消していったそれに、俺はため息をつきながら文句を言った。

流れ星に願いを叶える気なんか最初からないのだ。



「珍しくマジだったんだけどなぁ…」


この際届かなくてもいいから、とにかく気持ちを吐き出したくて

誰にともなく返事が返ってくるはずもない空に向かって俺はポツリと呟いた。

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