Far near―忍愛―
「……なんだそれ。側にいれば誰でもいいのかよ…あんたにとって男は置物かなんかか?」
なんて自分勝手な女なんだろうか。
呆れて
情けなくて
自然と声のトーンも低くなる。
「そ、そんな事思ってないよ、ただ…」
怒ってると感じた佐和子は失言したと焦ったように否定をし始めるが、機嫌を取りたいのがまるわかりで興ざめだ。
「同じ事だろ!!」
それ以上身勝手な言い訳なんて聞きたくなくて、俺は佐和子の言葉を無理矢理抑制した。
突然声を荒げた事に驚いた佐和子がびくりと身体を震わせて口を接ぐむ。
どこかで何かの糸が切れたようにプチッって音がして、気がついたら俺は佐和子を突き飛ばしてソファーへ追いやっていた。
勢いよく倒れこんだ彼女がその衝撃に小さく呻くと、すぐさまその上に馬乗りになって、その細く白い首元に手をかけ、力を込める。
ちょっと脅かしてやるつもりだったんだ。
男の俺がその気になれば
あんたなんかどうにだって出来るんだって
わからせてやりたかった。
「くる…し…っ」
俺は今
どんな顔をしてる?
綺麗な顔を歪めながら必死に俺の手をどけようともがく佐和子を見ていると、信じられないくらい興奮している自分がいる事に気づき、
本人ですら知り得なかった鬼畜な一面にある意味恐ろしさを感じた。