Far near―忍愛―


嘘みたいに晴れた強すぎる光りに無理矢理起こされて、昨日まで隣にあった温もりを確かめるように、俺はそっと手を伸ばした。

けど

そこは空を切るばかりで


はっとして振り向いてみても

やっぱりそこには何もなく、唯一点々と赤黒く変色して残っていた血痕がなければもしかしたら全てが夢だったように思ったかもしれない。


俺はその血痕を愛おしそうになぞる。


「……本当に壊れちゃったのかな」


今となっては
それを確かめる術はなくなってしまったけれど


失ったものは
自分が思っていた以上に大きくて

後悔はしないと決めていたはずが、考えることは

もしも時間を戻す事が出来たら…

なんて事ばかり。



ただ、救いだったのは

今にも泣いて叫んびたい衝動に刈られる中

さっきまであんなに晴れていた空が急に曇りだし、大粒の雨を降らせて俺の代わりに泣いてくれたから、俺は泣かずにすんだんだ。




     END
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