Far near―忍愛―
俺達の関係は周りから見たら少し異色だと思う。
姉弟にしては全然似てないし、親子と言うには年齢が近すぎるし。
必要以上のスキンシップはもう家族愛とは言えないような所まで来ていたけれど、もともと鈍感なのかなんなのか佐和子はさほど気にしていない様子だった。
小さい頃に母親を亡くしているからその反動で甘えているんだと思っているのかもしれない。
実際それを武器にしている節は俺にもある。
佐和子がちょっと待っててねとお風呂に入りに行ってる間、俺はベランダでタバコを吹かしながら、雲に隠れたいびつな月を眺めていた。
中学生から吸いはじめた煙草も
馬鹿みたいにブリーチを繰り返した金髪も
全ては忙しくてかまってくれなかった親父に叱って欲しくて、少しでも気を引きたくて始めたものだったけど
結局。
望んだような結果にはならなくて、その頃から俺と親父の溝は急速に深くなっていった。
でも、佐和子だけは怒ってくれるんだ。
もう先生達にも見捨てられているというのに。
俺が煙草を吸ってると、拗ねたみたいな顔をしながらそれを取り上げて、そんなに力いれなくても普通に消えるのに、ギュウギュウと火だねの部分を灰皿に押し付けて、こう言うんだ。
“煙草はすっごくすっごく身体に悪いんだから吸っちゃだめ!”って。
「…ふっ」
俺は佐和子のその台詞を思い出して吹き出した。
だって、子供みたい。
だけどそれが可愛くて、愛しくて。
今でも俺は煙草をやめられずにいる。