Far near―忍愛―


「お前よく我慢できるよな~」

小学校来の親友が机にうなだれる俺の横で窓の外を見ながら言った。

俺も本当にそう思う。


「怖いんだよ。暴走して側にいられなくなんのがさ…」

「うわっ。百戦練磨のお前の口からそんな言葉が出るとは…地球崩壊の日も近いな」

「はぁ?なんだそれ。真面目に相談してんだけど」


俺はちょっと不機嫌になりながら親友の弘樹を睨みつけた。


「いやいや。真面目に答えてるっつーの。てか俺ごとぎがお前に教えてやれる事なんてねーでしょ、女引き寄せる磁石のような奴が」
「磁石って…」


まぁ確かに昔から、狙ってオチなかった女なんていなかったけど。


「てかさ、佐和子さんておじさんが付き合ってきた女の中では珍しいタイプだよな。もっと激しいお水です!!ってのが好きなのかと思ってた」

「……俺も」


不動産会社に勤務している親父はなかなかの営業成績で結構な給料をもらっているらしく、年甲斐もなく身なりも遊び方も思い切り派手だった。

キャバクラで女を引っ掛けては別れてを繰り返して、うちに来る女も毎回毎回違う顔。


だから中学卒業してからすぐの頃、佐和子を初めて紹介された時は戸惑ったんだ。

いつもなら
向こうからもう嫌だって逃げ出したくなるくらい、悪態をついてやるのに

そんな気はおこらなくて
むしろ素直に可愛いなって見とれていた。


年上だってことはすぐに分かったけど、どう見たって俺とそんなに離れていない彼女は

綺麗で
清楚で

日本人が忘れかけてる古き良き時代がその身体にギュッと凝縮されたような…懐かしささえ感じる女だった。

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