サラリーマン讃歌
小柄な彼女と熊のような座長のツーショットは、かなり危険な絵面だった。

「この劇団のスーパーモデルこと、田上 恭子です」

サラリとそんな事を言ってのける恭子のスタイルは、確かにモデル並だった。

背は175センチの俺と然程変わらないし、足も嫌味なくらい長い。

外見的にはかなり派手な印象を持ってしまうが、結構礼儀正しかったりする。

そんな二十五才の彼女とマスコットの亜理砂が並ぶと、これもまた滑稽な絵面だった。

「ども。役者陣唯一の野郎であり、この劇団最年少でもある、黒一点の井上 幸平 二十一才」

「黒一点って何だよ?」

「紅一点の男バージョンです」

皆が失笑する中、彼だけは得意気に笑っていた。
いわゆる空気が読めない部類の人間なんだろう。

中性的なルックスを持つ彼は、多分黙っていればかなりモテる人種だとは思う。

だが皆の反応を見てる限りでは、彼のこの寒い発言もごく日常的なことだと推測される。

(……なかなか濃いな)

残りのメンバーは脚本の上村 千賀子。

音響・照明の岡本 勇。

役者陣は矢部 恵、竹村 香織、兵頭 理彩、佐々木 夕夏、中村 千尋。

そして座長の田島 祐介は演出などを担当していた。

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