サラリーマン讃歌
「馬鹿やろう。俺の年齢は人間の物差しでは計れないんだよ」
「座長は熊だからね」
「そう。熊だから」
「意味わからんわ!」
岡本がツッコむ。
「そんな事言ったら、亜理砂食べられるわよ」
恭子がまだ話にのってくる。
「食べるよ」
座長は不気味にニヤリと笑うと、目だけを動かして亜理砂を見る。
「亜理砂!死んだ振りや!」
岡本も更に話にのってくる。
亜理砂はその場に突っ伏して死んだ振りをする。
そんな様子を見て周りの人間は大笑いしていた。
こんな感じの遣り取りが、居酒屋の中でそこら中で繰り広げられていた。
そんな齷齪していない空気が、俺の疲れた心を徐々にだが癒してくれていた。
空見子の事を忘れた訳ではないが、最近日常の生活の中ではあまり味わえかった、和んだ雰囲気を俺は楽しんだ。
この劇団と出会えた偶然に、俺は感謝した。