サラリーマン讃歌
俺は久保にこれ以上突っ込まれないように、慌てて仕事の準備に取り掛かった。




「で、話ってなんすか?」

仕事が終わるといつもの居酒屋に来た俺達は、二階のテーブル席に向かい合って座っていた。

「で、話ってなんだよ、直哉?」

何故か俺の横に座っている風俗大王が、久保の言葉を真似て茶化すように訊いてくる。

久保と二人で会社を出ようとした時に、俺達に伺いも立てずにちゃっかりついて来たのである。

「なんでお前がついてくるんだよ?」

「だって飲みたいんだもん」

可愛い子ぶって言う高嶋に、冷たい視線を送る。

「飲みたきゃ一人で飲めよ。俺は久保と真面目な話があるんだよ」

「で、話ってなんだよ?」

「聞けよ、人の話を」

いつもの如く高嶋のペースに巻き込まれた俺は、これ以上突っ込んだところで人の言う事を聞くとも思えない高嶋を無視して、久保に向き直った。

「悪いな。付き合ってもらって」

「いえ。で、話ってなんすか?」

「いや、あれだ……とにかく、すまん」

俺はテーブルに手を突いて、久保に頭を下げた。

「へ?なんすか、いきなり」

久保は驚いた様に目を丸くする。

「とにかく俺が悪かったんだ。だから、すまん」

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