サラリーマン讃歌
そんな両親が離婚し、子供達二人は父親に引き取られた。

そして登は今まで以上に仕事に打ち込むようになった。
たまに休みがあっても、接待か何かで出て行ってしまう。

空見子はそんな父親に愛してもらいたい一心で、学校で態と怒られるような事をしたり、近所で悪戯などをして気を引こうとしたが一切効果はなかった。

それどころか、登に疎まれる事が多くなってきた。

登は空見子より十歳上である兄 圭一にばかり、愛情を注ぐようになりだしてしまった。

ちょうど大学に入学したばかりの圭一を、会社の跡取りとして育てようとしたのである。

圭一も其れに応えるかの様に成績を延ばし始めた。

どんどん自分から離れ始めている父親の気持ちは解ってはいたが、それでも父親に空見子は愛されたかった。

中学、高校と成績は常にトップクラスで、スポーツもバレー部でキャプテンを務め活躍した。

登に認めてもらえるようにそれこそ寝食を削っての努力をし続けた。

しかし、まだ少女と云われる様な歳でのそんな無茶な行動に、心はギシギシと悲鳴をあげていた。

空見子は中学の頃から万引きを繰り返していたのだ。

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