サラリーマン讃歌
「ああ、気をつけてな」
「ありがとう。直哉も気をつけて帰ってね」
「ああ」
そう言うと亜理砂は手を振って踵を返した。しかし、数歩歩いたところで急にこちらを振り返り、その場で話しかけてきた。
「直哉が何を悩んでるかよく解らないけど……女の子は何があっても、どんな事があろうとも、自分だけを見てくれる人を最後は選ぶよ」
「……………」
「自信を持って、直哉」
亜理砂はニッコリ微笑むと、反対側のホームへの階段に足を向けた。
亜理砂が見えなくなっても俺は呆然と立ち竦み、彼女の言葉を頭の中で反芻した。