サラリーマン讃歌

~親友(とも)~

亜理砂と別れてから俺は、寄り道することなく真っ直ぐに家へと帰った。

マンションのエレベーターを降りて俺が自分の部屋の前まで来ると、見覚えのある人影が立っていた。

「よう、おこちゃマン」

「何しに来たんだよ」

あからさまに嫌そうな顔をしている俺を気にするでもなく、高嶋はニヤニヤとしている。

「そんな嬉しそうな顔するなよ。お前の気持ちは、よおく解ってるから。みなまで言うな」

「お前の目は節穴か?」

「ま、とりあえず飲もうや」

高嶋に俺の言葉が届くはずもなく、傘を持つ反対の手に持っていたコンビニの袋らしき物を俺に掲げると、鍵を開けるように目で示した。

俺は大袈裟に溜め息をつきながら、ポケットから鍵を取り出すとドアを開けた。

「お邪魔しまあす」

高嶋は自分の部屋の如く、ズカズカと上がり込んでいく。

俺は傘を玄関に、荷物を床に降ろすと、仕方なくグラスなどを用意してやると、無造作にテーブルの上に置いた。

「まあ、座れや」

どちらが部屋の主か判らないような発言をしながら、高嶋がグラスにビールを注ぎ込んでいる。

「で、何しに来たんだ?」

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