サラリーマン讃歌
俺は高嶋の向かいに座りながら無愛想に尋ねた。

「見て解らないか。飲みに来たの」

「一人で飲めよ」

「寂しいじゃん」

「お前は子供か!」

「子供にお酒は飲めねえよ」

嫌味を言ったつもりが逆にやり込められてしまった俺は、無言でグラスの中のビールを喉に流しこんだ。

「で、どうなんだ、その後は?」

そんな俺の様子を見て、高嶋は真面目な顔で突然話題を変えてきた。

「何だよ、その後って?」

「決まってるだろ。久保の彼女と空見子ちゃんの事だよ」

「梓ちゃんとは昨日会った」

「ちゃんと土下座してきたか?」

「土下座はしてねえけど、ちゃんと謝ってきた」

高嶋の言葉に苦笑しながら答えた。

「そうか。良かったな」

「あ…ああ……まあな」

正直、良かったとは言える状況では決してなかったので、俺は歯切れ悪く答えた。

「何だ、また何かあったのか?」

昨日の状況を知らない高嶋は、呆れたように軽く訊いてくる。

だが、あの話は空見子にとって他人には知られたくないであろう過去なので、親友と雖も口外するのは躊躇われた。

「……悩んでる」

「いつもの事だろ」

< 125 / 202 >

この作品をシェア

pagetop