サラリーマン讃歌
間髪入れずに答えた高嶋のその言葉に、思わず苦笑してしまった。
確かに空見子の一件では高嶋に情けない部分ばかり見せている。

それでも何も言わず俺の愚痴や相談にいつも付き合ってくれていた。

良い手立てが全く思いついていなかった俺は、昨日の話を高嶋に掻い摘まんで話をした。
体の関係を空見子が強要されていると云う一点を除いて。

「なるほどな」

俺の話を聞き終えた高嶋はグラスに残っていたビールを飲み干すと、軽い調子で言った。

「正直、どうしていいか判らん」

「でも、よお。市議会選挙如きで娘の万引きがそんなに影響するかね?」

自分のグラスに再びビールを注ぎ込みながら、高嶋が尋ねてくる。

「……さあ。少なくともクミちゃんはそう思ったんだろ」

「でも、その話とお前がフラれた事とどう繋るんだ?」

「え?」

「だって、そうだろう。その話とお前らの恋愛話は関係ないじゃん」

「…………」

高嶋の鋭い質問に思わず言葉に詰まってしまった。

「まさか、万引きをしてる事をお前に知られたくなかったって訳でもないだろう?」

「……そうだな」

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