サラリーマン讃歌
~疑問~
「空見子さんに会いに来ました」
俺はゆっくりと立ち上がると登の目を真っ直ぐに見詰め、そう告げた。
「何だと!?」
登は驚きの声をあげると、汚い物でも見るかのような目付きで上から下まで俺を舐めまわすように見た。
「……空見子さんとお話がしたくて来ました」
俺は登の視線を気にする事なく繰り返し告げた。
「誰だ、お前は?」
急に声のトーンを落とすと登はすっと目を細め、俺を射抜くように見てきた。
「申し遅れました。桜井 直哉と申します。空見子さんの友達です」
「友達!?」
あからさまに登は不審がっていた。
明らかに歳が離れすぎているし、今の俺の姿を見ればその反応は当然であろう。
「……ええ、友達です」
「……貴様、その名前は本当だろうな?」
登は険しい顔のまま、俺に意味不明な事を尋ねてきた。
「はっ?」
「本当の名前かと訊いてるんだ!!本当は貴様が河野じゃないのか!?」
俺は愕然とした。
何故、登がその名前を知っているのか?
「何故、その名を…」
「私の質問に答えろ!」
俺の言葉に遮るように登が怒鳴った。