サラリーマン讃歌
「父親が知ってしまったって事と、空見子ちゃんがいなくなったってのは、やっぱり関係あんのかな?」
「……わかんねえ」
おそらく何かしらの関係はあるのだろう。そうでなければ、あまりにタイミングが合い過ぎている。
「でも、何かあの時の親父さんは……苦しそうだった」
空見子はいないと告げた時の登の表情を思い出しながら、俺は目を瞑ったまま高嶋に言った。
営業マンの性なのか、相手の言葉ひとつで色々な感情を読み取ろうとしてしまう。
表情や仕種、それもまた俺達にとってはひとつひとつが貴重な情報源だった。
「苦しそう……か」
俺の言葉を受け、何か考える様に高嶋は腕を組んだ。
腕組みをしたまま考えに耽っていた高嶋だったが、暫くすると俺をチラリと見ながら高嶋が喋りかけてくる。
「空見子ちゃんがいなくなったのは、親父さんにとっても予想外の出来事だったのかもな」
「……そうかもな」
俺自身も色んな可能性を探っていたが、同じ結論に達していた。
そう考えれば、登がこの話に関しての追求を避ける様に逃げ帰ったのも辻褄が合う。