サラリーマン讃歌
「……じゃ、どうしてクミちゃんはいなくなったんだ?」
新たな疑問が生まれた俺は、独り言の様に呟いた。
「……父親に知られてしまったから……だろうな」
「…………」
それが当たっているとなると、最悪のケースが俺の頭を過った。
あの誰よりも父親に迷惑をかける事を嫌っていた空見子が、現実にその事実を知られてしまった時、どんな行動に出るのか?
高嶋も同じ様な事を考えているのか、顔の表情がかなり厳しかった。
だが、二人とも敢えて口には出さなかった。それを言葉に出してしまうと、現実のものになってしまう様な気がして……
「……何処に行ったんだよ」
俺は俯き、声を絞り出すように呟いた。
(空見子……)
俺は祈る様な形でテーブルに手をつき、瞑想した。
(俺の事好きなんだろ?)
(……なんで?)
(父親がそんなに大事かよ……)
様々な疑問や思いが頭の中を駆け巡ってはいたが、最後は空見子の無事を祈らずにはいられなかった。
(……死ぬんじゃねえぞ)
(空見子……)
(愛してる……)