サラリーマン讃歌
その度に練習相手としてよく呼び出されたのが俺だった。

平日、休日問わずに電話をかけてくるので、多少は辟易もしたが俺はその都度相手をしてやっていた。

恭子にも電話をするらしいのだが、亜理砂の話を聞いている限りでは巧く誤魔化されているようだ。

亜理砂本人は気付いていないみたいだが……

今、稽古に励んでいる公演は四月の初めに予定されているのだが、今までは六月と十二月に公演を行なっていたらしい。

それを座長が「今年は四月にする」と言って、何故か頑として譲らなかったのだ。

その座長の意見に対しては、いつもより準備期間が短いと云う事と、今年で三年目ではあるが旗揚げ当初からその時期にいつもやっていたと云う事もあって、結構反対派は多かった。

しかし、彼は一切聞く耳を持たなかった。

「去年、直哉が入ってきて、今回は心機一転の年の一発目だからだ」

解るような、解らないような言い分をひたすら通して、自分の意見を強行させたのだ。

そんな子供の様に駄々を捏ねる座長を見て、皆苦笑したものだ。

「よし、今日はここまで!」

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