サラリーマン讃歌
未だに憮然とした表情で梓を見ている高嶋を無視して、俺は二人に向かって言った。

俺は店員を呼ぶと、それぞれの要望を聞いて飲み物を追加注文した。




「梓ちゃん、本命の大学受かったんだってな」

「当然」

「家から通うの?」

「そうだよ。電車で三、四十分くらいだしね」

梓は国立大学に合格していた。俺の学生時代の偏差値では100%無理なレベルの大学である。

「才色兼備だな」

久保達が来てから何故かずっと不機嫌な顔をしていた高嶋が、突然会話に入ってきた。

「よく言われます」

と、平然と宣う梓。

「そういう高嶋さんもイケメンですよ」

気を良くした梓が高嶋に言う。

「よく言われます」

と、平然と宣う高嶋。

そんな二人の遣り取りを見て、俺と久保は顔を見合わせて笑った。
二人は似た者同士なのかもしれない。

互いの近況を聞きながら、そんな他愛もない会話などを暫く楽しんでいた。

「あれから、空見子ちゃんから連絡はあった?」

興味本意なのか、或いは俺の為なのかは判らないが、高嶋が軽い調子で梓に訊いた。

「ないわ」

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