サラリーマン讃歌
質問した高嶋を見ずに、梓は俺を見ながら寂しそうに答えた。

「そっか」

場の空気がしんみりするのを避ける為、俺は殊更に明るい声で言った。

「ごめんね、役に立てなくて」

俺を見る梓の顔は本当に申し訳なさそうな顔をしていた。

「何で謝るんだよ。梓のせいじゃないだろう」

「そうなんだけど……何か悪くって。元を正せば私にも原因があるんだし」

以前彼女が言っていた、初めは俺と空見子を驚かすつもりで会わせた事について言っているのだろう。

「まだそんな事言ってんの。梓には感謝することはあっても、謝られることは一切されてないぞ」

心優しい梓に、俺は自然と笑みがでて、諭す様に言った。

「……ありがとう」

「だから感謝するのはこっちの方だって」

俺の笑顔を見て、梓も俺に微笑んでくる。

「でもな、俺は信じてる。もし彼女と縁があるのなら……結ばれる運命にあるのなら……また必ず会えるって」

懐かしい梓の笑顔を見ていると、あれ以来、誰にも言ったことのない本心が思わず出てしまった。

「……そうだね。私もそう信じてる」

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