サラリーマン讃歌

~手紙~

四人で飲んだ後、タクシーに乗って家まで帰ってくると、俺は布団に体を放り投げた。

仰向けに寝転がりながら何を考えるでもなくボーっとしていると、やはり空見子の事を思い出してしまう。

最近の俺は敢えて空見子の事は考えないようにしていた。

忘れる為ではなく、彼女の事を考えると今直ぐにでも探しに行きたくなる衝動に駆られてしまうからだ。

あの日以来、幾度となくその衝動と闘ってきたので、空見子の名前すら話題に出さないようにしていた。

その封印していた思いが今日の飲み会で解放されてしまった。

一度解放された思いは頭の中で一気に濁流となって、胸の中に空見子への想いとして押し寄せてきた。

今でも俺は間違いなく空見子を愛していた。

忘れられる訳がなかった。

考えないように努力はしてきたが、一時も彼女を忘れたことはなかった。

俺は布団から起き上がると、箪笥の一番上の引出しから、一通の封筒を取り出した。

ディズニーのキャラクターであるスティッチが描かれた可愛らしい封筒で、あの日の三日後に梓から手渡された物である。

俺は封筒の中から、封筒とお揃いのスティッチ柄の便箋を取り出した。

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