サラリーマン讃歌
第十三章

~公演前日~

いよいよ公演を明日に控えた金曜日は、仕事を休ませてもらった。

半年間がむしゃらに仕事に打ち込んだ結果、ある程度軌道にも乗ってきており、経済的にも若干の余裕は出来ていた。

それでも、まだまだ気を抜ける状況ではなかったので、当然俺自身は仕事をするつもりでいた。

だが、ここ二週間、昼は仕事、夜は稽古という生活をしてきた俺の体を気遣ってなのか、高嶋が「今日は休め」と言ってきたのだ。

俺は「俺の趣味で仕事に穴を開ける訳にはいかない」と頑なに断わり続けたのだが、頑固さは高嶋の方が上だった。

俺は高嶋と久保に礼を言うと、二人の言葉に甘える事にしたのだ。

「サクくん、何か手伝う事ないの?」

舞台のセットである階段の部分に腰を降ろして、手持ち憮汰さな様子で梓が話しかけてくる。

「ねえよ」

大道具を搬入し、組み立てている最中の俺は、梓を相手にしている暇などなく、素っ気なく答えた。

仕事は休んだものの、劇団でも公演前日である今日は、やる事は山程あったので、俺にゆっくり休んでいる暇などなかった。

「冷たいねえ。折角手伝いにきてあげたのに」

「誰も頼んでねえよ」

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