サラリーマン讃歌
まだ春休み中である梓は暇を持て余しているらしく、頼んでもいないのに突然やって来たのである。
今までも何度か稽古場に応援に行くと言って、冷やかしに来ようとしていたが久保が止めたり、俺が断わったりしていた。
しかし、今日は久保が公演場所に俺がいる事を漏らしてしまったらしく、梓自ら、場所を探し当て勝手にやって来たのだ。
「何、その言い方。優しくないね」
口を尖らせて言う梓を、俺は苦笑しつつ困り果てた様に頭を掻きながら彼女を見る。
そんな会話をしている時にたまたま通りかかった亜理砂の傍に、梓は駆け寄った。
「えーん、サクくんが苛めるんです。私の好意を踏み躙る暴言を吐いて、私の心を傷付けるんですう」
態とらしく猫撫で声で小難しい事を言う梓に、俺は苦笑するしかなかった。
「コラッ、直哉。こんな可愛い子苛めたら駄目でしょ」
亜理砂は梓を庇う様に俺の前に立ち塞がると、しゃがみ込んで作業をしていた俺を怒った顔で見下ろしてくる。
梓の言葉を真面目に受け止めている、こんな時の天然娘への対応には困る。
俺は苦笑しながら、ただただ頭を掻き続けるしかなかった。
今までも何度か稽古場に応援に行くと言って、冷やかしに来ようとしていたが久保が止めたり、俺が断わったりしていた。
しかし、今日は久保が公演場所に俺がいる事を漏らしてしまったらしく、梓自ら、場所を探し当て勝手にやって来たのだ。
「何、その言い方。優しくないね」
口を尖らせて言う梓を、俺は苦笑しつつ困り果てた様に頭を掻きながら彼女を見る。
そんな会話をしている時にたまたま通りかかった亜理砂の傍に、梓は駆け寄った。
「えーん、サクくんが苛めるんです。私の好意を踏み躙る暴言を吐いて、私の心を傷付けるんですう」
態とらしく猫撫で声で小難しい事を言う梓に、俺は苦笑するしかなかった。
「コラッ、直哉。こんな可愛い子苛めたら駄目でしょ」
亜理砂は梓を庇う様に俺の前に立ち塞がると、しゃがみ込んで作業をしていた俺を怒った顔で見下ろしてくる。
梓の言葉を真面目に受け止めている、こんな時の天然娘への対応には困る。
俺は苦笑しながら、ただただ頭を掻き続けるしかなかった。