サラリーマン讃歌
「いや、違うよ。後輩の彼女だよ」
感情をストレートに顔に出す、恭子のそんな表情に戸惑いつつ俺は答えた。
「あら、そうなの。てっきり直哉の彼女かと……」
俺の言葉に急に表情を和らげた恭子を、俺は不思議な思いで見詰めた。
「まあ、そんなに無神経じゃないもんね、直哉は」
「……何の事?」
俺は恭子の言葉の真意が解らず、キョトンとした顔で問い掛けた。
「え?この前、亜理砂をフったんでしょ?だから…」
「フった?俺が亜理砂を?」
「そう。一週間前くらいに。だから、そんな子の前にわざわざ彼女を連れてくる直哉の神経を疑ったんだけど……アレ?違った?」
やはり、俺の勘違いではなかったらしい。
今度は恭子が黙り込む俺をキョトンした顔で見る番だった。
「……もしかして、告白されてなかった?」
「ああ……でも、好きな子はいるかとは訊かれたけどな」
「好きな子がいるんだ?」
「……いるよ」
「そっか。だからあんなに…」
恭子は慌てた様に急に言葉を切った。
「あんなに……何?」
「う、うん……あの……ええと……凄い落ち込んでたんだよ、亜理砂」