サラリーマン讃歌
「何あいつ?」
「キモ~い」
そんな女子高生達の声が、俺の耳に飛び込んできた。
俺は居た堪れず、慌てて横断歩道を渡ろうとした。
その瞬間……彼女と目があった。
まるで魔法にでもかかったかの様に俺は立ち止まると、体の向きを変え、横断歩道を渡りきったばかりの彼女に向かって突然歩きだした。
(何してんだよ、俺は?)
自分でもなぜそういう行動に出たのかよくわからない。怖じ気付く自分の意思に反して、体は歩みを進めている。
近付いてくる俺を見ても、彼女は臆するでもなく、こちらをじっと見詰め、立ち止まっている。
「あの……」
彼女の目の前まで来ると、俺は見事に口籠った。
そんな俺を見て彼女は、撫然とした表情をしている。
極度の緊張状態にあった俺は、そんな彼女の表情を見て、益々パニクってきた。
そんな状態の俺が口走った言葉は、やはり非常に怪しいものだった。
「あのさ……名前教えてくれない?」
「は?」
彼女は怪訝な顔で俺を見詰める。既に究極のパニック状態であった俺は、追い討ちをかけるように続ける。
「名前教えて欲しいの!」