サラリーマン讃歌

~ファン~

開演二時間前の五時頃になると、チラシを配っていた劇団員達もチラホラと帰って来だしていた。

開場は開演の三十分前である六時半なので、皆余裕を持って帰って来ているのだろう。

客もだいたい開場の一時間前くらいにポツポツと来だして、三十分程前になると、受付ロビーなどが人で結構埋まっていたりする。

この劇団の知識があまりないまま、参加させてもらったので、意外に人気があることに初めは正直驚いていたものだ。

「ああ、疲れた」

態とらしく大きな声を出して、腰を叩きながら俺の前を梓が通り過ぎて行く。

「お疲れさん。サンキューな」

「いえいえ、全然。疲れてないから」

大袈裟に首と手を使って、しんどくないとアピールする梓の姿は更に態とらしかった。

「何か飲み物でも買って来ましょうか、梓さん?あ、久保先生も入りますよね?」

俺が揉み手をしながら梓に尋ねていると、そこに久保が余ったチラシを手に持ってこちらに歩いて来た。

「ありがとうございます。じゃ、俺買って来ますよ」

「何言ってんだよ。俺達の為にチラシ配りして疲れてるんだから、俺が買いに行くよ」

「じゃ、私イチゴミルク」

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