サラリーマン讃歌
「何や、そんなにびっくりするくらい嬉しいんか?」
俺の呆然とした表情を見て、岡本が嬉しそうに言ってくる。
「……どんな子だった?」
俺はその表情のまま、岡本に静かに問い掛けた。
「聞いて驚けよ。めっちゃ美人やった。直哉には勿体ないくらいの」
劇団員のヒューヒューと冷やかす声が飛び交っていたが、俺の耳には一切届いていなかった。
そんな中で、梓も何か感じるところがあったのか、急いで携帯を取り出すと、何やらそれを弄っていた。
「あんな美人な子はなかなかいねえぞ」
岡本は椅子から立ち上がると、バンバンと俺の肩を叩いてきた。
それに同調して、他の劇団員達もバンバンと体のアチコチを叩いてきたのだが、俺は皆にされるがままの状態だった。
「もしかして、この子じゃない?」
梓が慌てた様子で岡本に近寄ると、携帯を彼の目の前に突き付けた。
暫く携帯の画面をじーっと見ていた岡本だったが、納得したように頷いた。
「そう、この子や」
梓は呆然としている俺に、そのまま携帯をこちらに向けてくれた。
そこには、梓と、あの空のような笑顔をした空見子が写っていた。