サラリーマン讃歌

~眠れぬ夜~

公演初日は大成功だった。

客席は満席であったし、芝居の出来としても一人一人が持てる力の最大限を発揮出来たと思う。

ただ一人、俺を除いては……

やはり、芝居に集中出来なかった俺は、凡ミスを繰り返してしまった。

それでも仲間に助けられながら、なんとか大失態をやらかす様な事態にはならなかった。

初めて観た客にとっては気付かない様なミスばかりではあったが、演出家である田島には当然見抜かれていた。

公演が終わってからの座長からの全体へのダメだしは、ほとんどが俺へのダメだしであった。

「元気だしなよ。明日は頑張ればいいじゃん」

ダメだしの後、呆然とした表情をしている俺を、亜理砂などを筆頭に仲間達は励ましてくれた。

だが、そんな心温かい仲間達の励ましを余所に、俺の心を占めていたのは、今日の芝居への反省よりも大部分は空見子の事だった。

励ましをくれる仲間に、申し訳ない気持ちは当然あったのだが、どうしても空見子の事を考えてしまう俺がいた。

そんな状態である俺が、家に帰ったところで眠れる訳がなかった。

疲労は明らかに溜まっているのだが、目は爛々として一向に眠れる気配はなかった。

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